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われわれがジョイスティックコントロ一ルの免許を東京の府中運転免許試験場で取ったら、全国のジョイスティックコントロールの免許を必要とする人たちはきっと安心するだろう。
大方の予想よりも早く車両にナンバーが交付され、全国キャラバンを実施しているにも関わらず免許がないという状況が不安を助長したのかもしれない。
現在の障害者の免許の基準については各都道府県の公安委員会であまりにも違いがありすぎる。ある県では「運転席への乗り移りは5分以内」と基準があり、ほかのある県では「多少介助者に手伝ってもらってもかまわないでしょう」というところもある。
われわれスタッフが第1号のジョイスティックの免許取得者になっても、その基準が即全国共通にはならないだろう。中には、「スティック握るため握力のないものはジョイスティックの免許は取れない」といった馬鹿げた基準を出してくる公安委員会もあるかもしれない。
確実に道は開けてはいるが、まだ当分はイバラの道を歩むことになりそうである。しかし、われわれの歩んだ後には確実に道ができていることだけは間違いない。

 

第7節 運転席になる電動車椅子に関する考察

 

車両の認可を受けるときに1番問題になったのは電動車椅子の固定が20Gの衝撃に耐えられるという安全基準を満たしているかということであった。
第3章でも述べているが、固定装置はアメリカで安全基準を満たしているものを使用し、電動車椅子もすでにアメリカで座席にすることを認められた強度を持つ車椅子を使用した。ヘッドレストなど日本独自の基準の違いもあり、自動車用のシートをつけるなどした。
われわれは日本の安全基準をクリアするためのさまざまな工夫を施したのであり、安全基準を変えたわけではない。
「今回使用したアメリカ製の車椅子は基準をクリアしているという明確な事実があったが、日本製の電動車椅子は強度についての確認はされていない。安全基準をクリアする強度があれば座席とするのに問題はなくなるわけだが、それは強度試験や理論上の強度計算をしてみないとわからない。強度が十分だったとしても固定装置やヘッドレストなど若干の改造は必要になる。」参加者からの質問には以上のように答えるしかなかった。
アメリカ製の電動車椅子はメンテナンスや価格の面で確かに一般ユーザーには日本製より手が出しにくいかもしれない。その上、改造が必要となればなおさら不安になるのであろう。
日本製の電動車椅子が安全基準をクリアしている強度かはわからないが、日本の電動車椅子メーカーが強度をクリアしている製品をつくることは可能であろう。消費者である当事者が座席として認められる製品を要望することによって、日本製の座席として認められ得る電動車椅子が商品化されることは十分可能と思われる。
「手動車椅子でも座席にならないか」と参加者から質問されたこともあったが、「折りたたみ等の機能を持ち、軽さの追求をしている関係上フレームの強度が弱いと思います。手動車椅子では20Gという安全基準はクリアできそうもない」と答えるしかなかった。

 

 

 

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